奨励作品 一万円

魔法のことば

読んだ本・『星の王子さま』サン・テグジュペリ

書いた人・蜂蜜れもん

「この時期に手に入れたものはとても価値があり、あなたにメリットをもたらします。」


それは、物質の場合もあれば、絆や友情、名誉や情報といった形のないものかもしれないらしい。そして、それなりに手がかかるもので、ケアやメンテナンスが必要になるかもしれないらしい。ちなみにこれは、双子座の六月後半の運勢だ。


占いなんて当たらない、馬鹿馬鹿しいと思う人はいると思うけれど、私はUFOを信じるし、宇宙人や幽霊の存在も信じる。おまじないも効き目があると思っているし、魔法だってあると信じている。ついでに、地球以外の星で、私と同じように生きているものがあるということも。




何かを手に入れた感覚が無いまま六月も終わりにさしかかった時、私は一冊の本に出会う。それが、星の王子さま。


それは、砂漠に飛行機で不時着した男性が出会う、小さな男の子、星の王子さまとのお話。


その本には、言葉を話す花や、キツネやヘビがでてくるし、星を飲み込む恐ろしいバオバブもでてくる。孤独な大物気取りや、恥ずかしがり屋の酒びたり、自分を有能だと思っている実業家に、一生懸命な点灯人、なんにも知らない地理学者と、少々厄介なおとなたちがでてくる。列車を送り出す鉄道員も、よく効く薬を売る物売りも。


中でも、王子さまが住む星に咲く花の話をするところが、私は好きだ。


王子さまは、どこからか運ばれてきた種が成長する様子を観察する。種は芽をだし、茎になり、やがて大きなつぼみになった。そして綺麗な花になる為に、時間をかけた。秘密の身じたくだ。ようやく花は姿を現し、王子さまはその美しさに胸を打たれる。恋のように。

花が朝ごはんの時間だと言ったら、王子さまは水をくんでごちそうしたし、風が嫌いだと言ったら、ついたてを立てた。寒いと言えば、ガラスのおおいを被せた。そうして一生懸命わがままな花に寄り添うが、やがてその花のことを信じることができなくなっていく。


少し大人になり、王子さまは、花への素敵な想いを言葉にしながら、別れ話をする。そして王子さまは、旅に出る。花も、王子さまも、とても大切なことをやさしい言葉で紡いでいるので、あなた自身の目と心で確かめてほしい。


旅先で、王子さまはいろんなおとなに出会う。星をめぐり、やがて地球にたどり着く。そこで出会うキツネに、何が王子さまにとって花をかけがえのないものにしたのかを教えてもらう。そして、こんな秘密も教えてもらう。


「いちばんたいせつなことは、目に見えない。」



私は、愛だとか、真心だとか、そういうことが大切なんだと思いながら純粋に生きてきた。少し前までは。でもいつの間にかそれを心のなかに閉じ込めて、結局目に見えるものを追いかけていたのだ。

時間は沢山あると思っていたし、どうして皆そんなに急ぐのだろうと不思議でたまらなかった。 気付けば、少しずつ、自分も早歩きをしていた。

そのことに、この本がブレーキをかけてくれたのだ。


人生において大切なことは何か、忘れてはいけないことは何か、この本は少しずつ、教えてくれるのだ。そして、これからおとなになる人や、もうおとなになってしまった人、まだはじまったばかりの人や、クライマックスを迎える人、どんな人にも、かけがえのない宝物を、宝箱と一緒に与えてくれる。いつ開けても、光り続ける宝石のようなものを。


私はもう手に入れた。それはとても繊細なものだから、ケアをしなくてはならないと思うし、定期的に、メンテナンスもしたほうがいいだろうな。

忘れそうになった時は、星を見れば、きっと思い出すし、それでまた彼に会いたくなったら、秘密の本を開けばいい。


私は彼を、最期まできっと忘れない。そして星になり、きっと彼に会いにいくだろう。


これ以上に素敵な魔法を、私はまだ知らない。


星の王子さま (新潮文庫)
サン=テグジュペリ
新潮社
売り上げランキング: 627