入選作品 五千円

日本画家堀文子さんのすさまじい生き方

読んだ本・『99歳、ひとりを生きる。ケタ外れの好奇心で』堀文子

書いた人・岡本喜代子

 最近、本屋さんで偶然見つけた本で。スゴイ人と出会った。日本画家堀文子さんだ。「99歳、ひとりを生きる。ケタ外れの好奇心で」(三笠書房,2017)の著書である

『群れず、慣れず、頼らず』をモットーに、100歳の今も、ひとりで、いつも自分を極限の感受性が発揮できるように、今の一瞬一瞬に様々なものに興味を持ち、その生命の息吹に興奮し、崇高な精神に高め、日本画を描き続けている。

 その感性を損なわないために、一つ所に自分を安住させない。52歳で都内から大磯に、66歳で軽井沢、70歳でイタリアにアトリエを構えた。その後も、77歳でアマゾン、80歳ペルー、81歳で幻の高山植物ブルーポピーを求めて、5千メートルのヒマラヤ山脈の高地に登った。

82歳で一人でいる時に、大動脈瑠破裂の大病を患い、思いがけず自然に止血したため命を取り留めた。病や老いに蝕まれる体がある一方、その体を助けようとする自分の体の仕組みにも驚嘆する。

高等女学校時代に自宅近くで六・二六事件にも遭遇した。これら戦争体験等自由でなかった40年を引いて、自分の年齢は、実年齢マイナス40歳と言う。ビィビットな心を持ち、日々、好奇心で心ふるわせ、今日の自分に留まることなく作品を生み続けている。

私も、この「実年齢マイナス40歳」の気持ちで生きようと思わせてくれた。古希の私は、まだ「30歳だ!」、いろいろこれからのビジョンを具体的に考えていきたいと思えるようになった。

 老いには、不安・苦悩は付き物だが、彼女はさらっと言ってのける。「親を背負って飛んでいるスズメ何ていないでしょ!」と。自然界では、生まれるのも、死ぬのも、生きるのも当り前の、普通の出来ごと、何が起こっても、騒ぐことではないと言ってのける。静かに、当たり前のこととして受け入れていくことが自然界の普通のことなのだといってのける。これは、自分の老後を心配する私にとって、目からウロコであった。今を、イキイキと生きることの大事さを改めて学んだ。

 なお、私が驚いたのは、「わたくしは、次に生まれてくることがあったら、木になりたいと思います。」と言ってのけるのだ。動物より動けない木になることは、罰を受けた存在のように思っていた私はビックリ仰天した。人間も動物も、植物も「同じ生きている存在」と悟った者ものしか言えない言葉だ。

 また、堀氏は知らないことが年々増えると、本を読み耽っている。「制作は、私の感動の記録」と言いながら日々、今も自分自身の惰性と戦っている。自分をとことん壊すために旅に出て、「息の絶えるまで感動していたい」と言う。

 自分の死までも、初体験の老化のプロセスを味わいながら必死に生き、必死に描いている。

 また、足腰が衰えてきたら、動かなくても新しい発見のある世界を見つけた。顕微鏡を使った微生物等の細微の世界を描き始めた。100歳を過ぎて、また、どんな新しい挑戦の証しの新境地の作品を見せてくれるか楽しみだ。

 私は、9月に古希を迎え、定年後の3か所目の職場にいる。非常勤の団体役員をしている。

堀氏とこの書で出会い、一般的には、人生の終活期を迎えたが、自分の生活パターンを変える決意をした。起床午前5時、就寝は午前0~1時、こんな、生活を何十年も続けてきた。これでは、新しいものを産み出せない。そこで、私は趣味の絵や詩を作る創昨的活動のために午後10時就寝、午前3時起床に改め、3~5時までの2時間を絵と詩や文章の創作活動にさくことに決めた。

堀氏のこの作品は、古希を迎えた私の生き方を大きく変えた1冊だった。


99歳、ひとりを生きる。ケタ外れの好奇心で (単行本)
堀文子
三笠書房
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